興行チケットの一次流通と二次流通の市場規模
先日はじめて映画の舞台挨拶に行きました。
前日の夜中にチケットキャンプで、定価以下の1000円で購入。
必要な情報がメッセージで送られ、当日映画館で発券というあまりにスムーズな流れに驚きました。
普段の映画鑑賞というとNetflixでBGM代わりに流すことが多いのですが、役者の熱い想いを生で聞き、スマホの使えない環境で全神経を作品に集中させる...というのはなんとも贅沢な時間。泣きました。
そこで今日はチケット市場の一次流通と二次流通について調べてみます。
まず日本におけるライブ・エンタメ市場規模を見てみましょう。
2015年次点で5000億円以上の市場規模であることがわかります。
ここに映画と遊園地・テーマパークも含むと1兆2800億円('13年)の市場規模となるのですが、今回は二次流通のメインジャンルである以下の3つに絞ります。
(※スポーツに関しては2013年までの統計しか見つからなかったため省略。)
順調に市場が拡大していますが、特にここ5年間の音楽市場の伸びが著しいですね。
2013年までのデータ(エンタテインメント市場における 「電子チケット」の現状レポート|ぴあ株式会社)
2014年,2015年のデータ(2015年のライブ・エンタテインメント市場|ぴあ株式会社)
音楽とステージのジャンル別市場規模も見てみましょう。
2つの円の面積比は市場規模の比と同じです。
音楽ではポップスが圧倒的ですね。ジャニーズやアイドルなどの内訳が気になります。
(エンタテインメント市場における 「電子チケット」の現状レポート|ぴあ株式会社)
また、近年では2.5次元ミュージカルが盛り上がってきています。
2.5次元ミュージカルとは、2次元の漫画・アニメ・ゲームを原作とする3次元の舞台コンテンツの総称です。
2015年の2.5次元ミュージカル市場規模は104億円。前年比10.2%増と順調に成長。タイトル数は123本(前年より20本増)、公演回数は1,660回(前年比17.8%増)といずれも増加しましたが、前年の宝塚歌劇100周年記念で例年以上に公演数の多かった「ベルサイユのばら」による動員数の純減が響き、動員数は前年比3.1%減の132万人にとどまりました。(好調な2.5次元ミュージカル市場/ぴあ総研が調査結果を公表|ぴあ株式会社)
(2015年の2.5次元ミュージカル市場規模推計|ぴあ株式会社)
日米で比較してみましょう。スポーツ市場の差が目立ちますね。
(映画、遊園地・テーマパークを含むアメリカのエンタメ市場規模は約4兆円。映画は日本の5.8倍!)
スポーツというと、2014年2月にチケットストリートが日本バスケットボールリーグ(NBL)と提携し、日本初の「主催者公認」のチケット二次流通を実現させました。2014年12月にはStubHubと業務提携しグローバル二次流通サービスをリリースしていましたが、現在は運用休止しているもよう。
StubHubとは、eBay(イーベイ、本社:米国)のグループ企業で、米国チケット二次流通市場におけるトップ企業です。ここは長くなるので、海外のチケットマーケットプレイスにつていはまた折を見てまとめようと思います。
(エンタテインメント市場における 「電子チケット」の現状レポート|ぴあ株式会社)
ちなみに、日本は米国に次ぐ世界2位のライブ・エンターテイメント市場。全世界のチケット市場規模の約1/5を占めています。
チケットストリート西山氏より(チケットストリート、二次流通拡大への挑戦|東洋経済オンライン)
では、チケットの二次流通はどうでしょうか。
国内ライブエンターテイメントの年間ユニークユーザーは2700万人といわれているなか、二次流通でチケットを購入するユーザー数は200万人ほどと言われています。('14年時点)
アメリカと比較すると、日本の一次流通に対する二次流通の割合が小さいことがわかります。このことから、今後日本において二次流通の割合が大きくなり、市場規模が倍以上になる可能性も見えてきますね。
2014年時点での全世界のチケット一次流通は約3兆円、二次流通は1.8兆円という推計も見られましたが、1.8兆円には遊園地・テーマパークも含まれていると予想されます。
チケットストリート西山氏より(チケットストリート、二次流通拡大への挑戦|東洋経済オンライン)
今やチケット二次流通市場で国内最大級となったチケットキャンプの月次流通総額の推移はこちら。
2014年1月に有料化。同年12月時点で流通総額は前年比603%の8億円、取扱件数は前年比725%と順調に数字を伸ばしています。
2015年3月にミクシィによる115億円での買収。
SNSのmixiコミュニティとの連携開始。mixiではクローズドなファンコミュニティが形成されており、既に個人間のチケット取引が行われていたので親和性は高かったもよう。同年6月には登録会員数200万人を突破しています。
同年7月8月と11月12月に全国規模でのテレビCMを放映。mixiのモンストCMによるマス・マーケティングの知見が生きたもよう。CMの効果が流通総額の推移にも見て取れますね。
(フンザ社の株式取得について|株式会社ミクシィ)
最後にモバイルコマース市場全体を見てみましょう。
ここ10年以上、スマホ経由の販売市場が拡大を続けています。
「モバイルコマース市場」は
●物販系市場(一般的な通販を対象)
●サービス系市場(興行チケット、旅行チケット、航空チケット、鉄道チケット等を対象とした市場)
●トランザクション系市場(証券取引手数料、オークション手数料、公営競技手数料等を対象とした市場)
に分けられるそう。
チケットの二次流通サービスにおいては、チケット代(サービス系市場)と、手数料(トランザクション系市場)両方がありますね。
(Mobile Content Forum|一般社団法人モバイル・コンテンツ・フォーラム)
オークション/フリマサービス利⽤者数は、'14年1月時点でPC、スマホともにほぼ同数であった利用者が、'16年1月にはスマホからの利用者がPCの2倍以上となっています。
また1人あたりの利用回数もスマホがPCの約3倍と大きく差をつけました。
この背景には、後述するメルカリを筆頭とするフリマアプリの成長があります。代表的なものでは、ファッションに特化した「フリル(FRIL)」(Fablic運営、500万DL) や、「zozoフリマ」(スタートゥデイ運営)、ハンドメイド専用マーケットである「minne(ミンネ)」(GMOペパボ運営、600万DL) などが挙げられます。('16年6月)
( 2016年2月23日付ニュースリリース|ニールセン株式会社)
スマートフォンから最も利⽤者の多かったサービスはヤフオクの1,768万⼈。
2位となったのはメルカリで、1年間で利用者数が2.1倍に伸びています。アプリの利用率は95%と圧倒的ですね。ちなみにメルカリがAndroid版、iOS版をリリースしたのが2013年7月、Webから出品可能になったのが2016年3月です。3月以降のブラウザ利用者数の伸びが気になるところ。
メルカリの国内での月間流通額は100億円を超え('16年3月)、DL数は国内で3000万(米国は1000万)を突破しています('16年6月)。
( 2016年2月23日付ニュースリリース|ニールセン株式会社)
ちなみにチケットキャンプのデバイス別閲覧比率はこちら。
スマートフォンからの利用が圧倒的ですが、アプリ比率は15%弱のよう。('14年時点)
(フンザ社の株式取得について|株式会社ミクシィ)
今回は全体像をつかむために、市場規模に焦点を当てて書いてみました。
チケット販売のシステムや、去年あたりから騒がしくなっているチケット転売問題についてもまた書きたいと思います。