音楽業界の転売対抗策と、チケットマーケットプレイスのトラブル防止策
2016年8月23日、音楽業界の4団体と116組のアーティスト、24の音楽イベント主催者が「チケットの高額転売に反対します」という共同声明を発表しました。#転売NOというハッシュタグとともにSNSで拡散され、読売新聞にも掲載。公式サイトも開設され、現在は発表当初よりも参加者/団体が増えています。
「ネットダフ屋」問題が浮上したのは10年以上前ですが、なぜこのタイミングだったのでしょうか?
きっかけはチケットキャンプのテレビCMでした。音楽業界は「転売サイトがあたかも世の中に認められた”公式”というイメージになり、ユーザー側にも罪悪感がなくなってしまうと危機感を覚え、まずはアーティストが声をあげ、チケットの高額転売には反対だと明確に示すことが必要ではないかと考えた」ようです。
音楽業界の転売対抗策
公式サイトによると、音楽業界は以下のような転売対抗策をとっているようです。
- 具体的対策(例)
- 会員登録の厳格化(多重登録の防止等)
- 不正購入情報の関係者間情報共有(個人情報を除く)
- 電子チケットの導入による本人確認の厳格化
- オフィシャル再販(リセール)サービスの順次導入
- 全体サイクルの中での、転売抑止策
- 公式リセール
都合により行けなくなってしまったライブチケットを購入者が出品。抽選が行われ、定価で取引される。
(実施公演例一例:THE YELLOW MONKEY(EMTG) / UVERworld(EMTG) / コブクロ / MAN WITH A MISSION / AIR JAM(チケットぴあ) / テレビ朝日ドリームフェスティバル(e+) / etc. )
公式リセールを支えるパートナー企業
- LiveStyles
電子チケット発券専用アプリ「tixeebox」を運営。
「tixeebox」の特徴
- 転売防止(SMS/音声通話認証、チケット分配の制限/防止、座席任意表示機能など「レベル別の転売防止機能」を実施)
- 公式チケットマッチングサービス(「DMM Passストア」で定価でチケット受け渡し。公演当日までの売買が可能。)
- インバウンド対応(世界中のどこでもチケット受け取り可能。多言語対応。)
- EMTG
オフィシャルファンクラブ公認の「チケットトレード」サービスを運営。定価取引、入場保証。
- テイパーズ
フルフィルメント・サービス(システム開発から現場での人員対応までトータルサポート)エブリィ・エンタテインメントの「Ticket Every」を導入。
「チケッティング事業:転売防止/オークション対策」の特徴
- 当日発券(ライブ当日まで座席と座種が未定)
- 顔認証(過去、ももいろクローバーz、B'z、福山雅治、BABYMETAL、Mr.Children、南條愛乃などが実施)
- マッチング(主催者主導の公式二次流通システム。転売目的でないユーザーを特定し、定額にてチケットを譲渡。)
- ボードウォーク
デジタルチケットサービス「ticket board」を運営。会員数450万人、年間チケット取り扱い約250万枚。
「ticket board」の特徴
- 不正転売の防止(所有者の本人確認、公演直前の座席通知)
- 海外在住者への対応(英語版の申込/販売ページ/ユーザーガイド/FAQ対応)
- 抽選と配布(主催者の意向に沿った柔軟な抽選や配布が可能)
- 顧客情報の取得/データ利用・分析
- リアルタイムでデータ集計
定価リセール(定価での再販売)のみの二次流通サービスを運営しているチケットぴあは、転売チケットのトラブルとして以下の3つを挙げています。
- 詐欺に遭ってしまう
- 入場できない
- 公演中止・延期の場合の補償が無い
チケットマーケットプレイスのトラブル防止策
しかし、チケットマーケットプレイス側の取り組みも進んでいます。
チケットキャンプを例に取ると、上記の1.と3.については問題なく、2.については万が一入場できないことはあるが、全額返金という補償をしています。
具体的な取り組みを見てみましょう。
チケットキャンプのあんしん取引
【詐欺・トラブル時の補償】
・全額返金制度
チケットが届くまでは運営が代金を預かるため、万が一届かない場合は全額返金。
・偽造チケット補償制度
購入したチケット(紙発券のみ)が偽造チケットの場合、チケット代金を運営が補償。
・電子チケットの入場確認
入場確認ができるまでチケット代金を運営が預かり。また偽造QRコードなどトラブルが発生しない仕組みを用意。
【ユーザーの保護】
・個人情報非公開取引
本人確認を行うことで「プライバシー機能」が適用され、取引時に登録住所・氏名を非公開にすることが可能。
・常時サポート体制
365日24時間カスタマーサポートが対応。
【ユーザーの質の担保】
・評価システム
取引ごとにユーザー同士の評価を導入。運営判断により一定基準よりも低い評価を受けたユーザーの取引停止、強制退会なども行っているもよう。
・本人確認
公的書類による本人確認を行い、「本人確認済み」の認証マークを表示して個人の信頼性を担保。
・違法チケットの通報受付
詐欺チケット、悪質ユーザーの通報機能あり。運営判断により悪質なユーザーの利用停止措置を行う。
以上のように、万全なサポート体制が築かれているようです。
しかし公式ではないがゆえに「万が一入場できない場合がある」ことは事実。お金が全額戻ってきても、楽しみにしていたライブに入れないのは大きな損失ですね。
ライブ会場で当日チケットを手渡しすることもできるユニークな制度を設けているチケットキャンプ。ユーザー間のやり取りを見ていると、身分証明書が必要な受付では購入者本人が同行して入場することもあるようです。
平行線を辿る話し合い
冒頭の音楽業界の声明でやり玉にあげられたチケットキャンプですが、音楽業界との話し合いは行われたものの、平行線を辿っているようです。
2016年10月には、mixiの社外取締役中村伊知哉さんが辞任しました。
中村氏は、ミクシィの取締役であると同時に、音楽制作者連盟(音制連)、音楽事業者教会(音事協)と関係しており、「おそらく両サイドに足場を置く唯一の者」として問題解決に取り組み、ミクシィ側と音楽業界の関係調整に努めたが、「力が及ばず、アーティストの意見表明や、その後の報道などに至り責任を感じた」と、自身のブログで述べています。